11日目

地位が人をつくる,そういう話.ぼくはこの考え方が嫌いだった.実力相応の地位が与えられるべきという考え方は,おそらくひどくもっともである.でも,もしそれで選考がなされたら,恐ろしくつまらない公募人事になるだろう.人の実力を測るなんて無理な話で若手ならDCと論文数くらい.つまり,マクロに考えれば旧帝大のビッグラボが圧倒的に有利,分野の鞍替えは最悪.

 

そもそもぼく自身も,明らかに見込みという名のギャンブルでここまで雇われてきた.雇った側の真意はわからないが確実に頭がイカれている.ぼくなら絶対に自分自身をとらない.でも,雇われた以上はその地位にふさわしい働きが求められているわけで,適応すべく一生懸命にはたらく.そうやって研究者としての人格形成がなされ,やがては地位が人をつくるのだろう.

 

ちなみに,地位をとったはいいが適応できなかった場合はどうなるか.「あの人事は失敗だった」とか,知り合い経由だった場合は「やっぱ出来公募はクソ」とか,まぁそんな悪口を言われる,たぶん.適応するのはなかなかに難しくリスクを伴うので,総合的に考えれば「地位が人をつくる」は否定されるべき考えではないように思う.

 

仮に否定されてしまうと分野の鞍替えが委縮してしまい,科学全体としての損失は大きいように思う.対照実験はできないし,やりたくもやられたくもないが.