22日目

ドラクエみたいなターン制ゲームには「逃げる」というコマンドがあって,中上級者になるとだいたいは使わないけれども,初めての人はお世話になることもままある.パーティが全滅したら所持金が半分になるとか,そういう場合はなおさらである.ゲームによっては逃げた回数が記録されることもあり屈辱に感じることもあるだろうが,だいたいそういうゲームは全滅した回数も記録されるのでピンチになる時点で完璧主義者のプランは崩壊している.

 

人生も「逃げる」コマンドはもちろんある.程度によるけど,仕事を辞めるとかはその最たる例だ.人間関係を切るのもそのうちに含まれるだろう.後者は積み重ねたものが多いときほど難しい決断だ.たとえ「逃げる」がベストなコマンドだったとしてもそれを選べる人はそうは多くない.逃げればまた戦えるかもしれないのに,突撃して全滅して取り返しのつかない事態を引き起こしがちである.

 

バトル系マンガでは死闘の末に主人公がボスを倒すというある種のお決まりの展開があるが,ぼくはあまり共感できない.むしろ,「勝てない・・・いまは撤退だ!」の方がリアルで,そういう決断ができる才覚はもっと評価されるべきだと思う.たぶん,そういうマンガはリアルで面白い.なんなら,そのボスは倒さずにエンディングを迎えるのでも構わない.逃げた時点で違うルートが開けていて,それを選ぶことを負け犬とみなすのか,生きる活路を見出すのか.死んだら終わりなのだから考えるまでもない.

 

ゲームや漫画を現実世界と一緒にするなという意見もあるだろうけど,現実世界で生きる以上はゲームや漫画を引き合いに思慮をめぐらすことは悪くないと思う.そういうポップな考えを導入できればいくぶんかは生きるのが楽になるかもしれない.